世界的ファッションブランドである、メゾンマルジェラ(Maison Margiela)の定番スニーカー
「ジャーマントレーナー」。
よく知らない方でも、この(↓)デザインのスニーカーを一度、目にしたことがあるのではないでしょうか?
白色ベースの細いシルエットに、グレーのスウェードやベージュ系ソールを合わせたデザインが、実に上品。
なるほど大手メゾンの定番ラインナップに顔を連ねているのも納得な名作スニーカーです。
しかしながら・・・
このジャーマントレーナーと同じデザイン(もしくは良く似たデザイン)のスニーカーを、マルジェラとは無関係のブランドページで見たことはありませんか?
実はこのジャーマントレーナー、マルジェラが開発したオリジナルのスニーカーではありません。
マルジェラのジャーマントレーナーが「レプリカ・スニーカー」と名付けられているのも、それが理由だったりします。
そんなワケでして、今回の記事では「ジャーマントレーナーの特徴」や「マルジェラとジャーマントレーナーについて」を解説していこうと思います。
「いろんなブランドから発売されてるけど、何が違うの?」
「おすすめのジャーマントレーナーはどれ?」
「マルジェラが、自ブランドのジャーマントレーナーに『レプリカ』と名付けてるのは何で?」
そんな悩みや疑問をお持ちの方の、お手伝いができればと思います。
ジャーマントレーナーとは?
では早速、ジャーマントレーナーの基本知識をおさえていきましょう。
軍隊のトレーニングシューズを元ネタにした、上品な“大人のスニーカー”
「ジャーマントレーナー」とは、1970年代~1994年のドイツ軍で実際に採用されていたトレーニングシューズの通称です。
そして同時に、このドイツ軍のトレーニングシューズを“元ネタ”にして生み出されたローテクスニーカーの通称でもあります。
1960~70年に、世界的に人気となったローテクテイストを基に、真っ白ではない配色が施されることで、基本スペックとしてアンティーク感を備えている、上品な大人のスニーカーと言えます。
様々なブランドからレプリカモデルが販売中
ジャーマントレーナーに関して特徴的なのが、特定のブランドが展開しているモデル……というワケではなく、様々なブランドから「ジャーマントレーナー」というタイプということです。
ブランドによってデザインディティールも少しずつ変わっており、元ネタに最も近いとされる「このデザイン(↑)」を1つの目安にするとして、
ざざっとこのように、色々なジャーマントレーナーが流通しています。※右にはみ出ている部分は横スクロールできます。
左からディティールの違いにふれていきますと——
- スウェードパーツが多めのデザイン
- オールブラックver.
- いわゆる一般的なデザイン
- ソールまで白い
- ハイカットタイプ
- スウェード部分を、全てカーフレザーに。
- インナーのブラウンが少し薄いベージュで、コントラストを控えめに。
- ベルクロ仕様のレトロ感。
- ベージュ
——などなど、多種多様。
どれも「ジャーマントレーナー」を基に、ブランドコンセプトや“こだわり”を込めて解釈しているのですね。
また、様々なブランドから販売されているため、価格帯も多様。
「ちょっと素材感を妥協すれば、近いデザインの一足を購入できる」というため、ジャーマントレーナー自体は比較的手にしやすいモデルと言えます。マルジェラを選ぶと6万ぐらいいっちゃいますが。
マルジェラはレプリカを自称。では、いわゆる本物は……??
ジャーマントレーナーは、軍隊のトレーニングシューズが元ネタなので、そもそも今世の中に出回っているのは、全て「復刻品・レプリカ」といえます。
しかし、それでもマルジェラほどのブランドがわざわざ「レプリカ・スニーカー」を名乗っているのは、なぜか。
メゾンマルジェラの創設者「マルタン・マルジェラ」がジャーマントレーナーと出会ったのは、パリ展覧会。
日本の靴メーカー『タナカユニバーサル』が復刻・出品していたジャーマントレーナーを気に入ったのだそうです。
当時、マルジェラはタナカユニバーサルにジャーマントレーナーの生産を発注しようとしたのですが、タナカユニバーサル側が「自由に作っていいですよ」と回答。
感銘を受けたマルジェラは、自信のブランドから発信するジャーマントレーナーを「レプリカ」と呼ぶことでタナカユニバーサルへのリスペクトを表し、それが現在まで続いているということです。
タナカユニバーサルさんはnoteも運営しているので、そちらに興味があるかたはコチラから>> |
実際に使われていた工場を再稼働した、タナカユニバーサル
現在、世の中に出回っているジャーマントレーナーの中で、“元ネタの軍隊スニーカー”に一番近いのは『タナカユニバーサル』のジャーマントレーナーです。
タナカユニバーサルは、1942年に創業した日本のシューズメーカー。
このタナカユニバーサルのジャーマントレーナーが、本物に近いとされる理由、それは、ジャーマントレーナーを作っていた工場の機械と設計図、素材をそのまま再稼働させている生産背景にあります。
昔稼働していた工場を復活させ、昔使われていた型紙(設計図)を使って、もう一度作り始めた。そりゃ、本物ですね。
軍用シューズ工場で、現代テイストにアップデート生産している、リプロダクションオブファウンド
タナカユニバーサルと同じように、軍用シューズ工場でジャーマントレーナーを生産しているブランドに『リプロダクションオブファウンド』があります。
生産背景が似ているのですが別々のブランド。
そしてジャーマントレーナーの方向性にも違いがあります。
タナカユニバーサル製とリプロダクションオブファウンド製のジャーマントレーナー違いを細かく解説しているページがありましたので、詳細はそちらで見て頂くとしまして、ざっくり説明すると
- タナカユニバーサル製は、本当にオリジナルに沿った仕立て
- リプロダクションオブファウンド製は、今ドキらしいスリムシルエットな仕立て
という違いがあるそうです。
吉祥寺のセレクトショップROL様の特集ページにて、「タナカユニバーサル製」と「リプロダクションオブファウンド製」の違いが解説されています。興味がある方はコチラからどうぞ>> |
おすすめのジャーマントレーナー11選
ここからは様々なブランドから発信されているジャーマントレーナーを紹介していきます。
実際に購入するときの参考・目安にしてもらえれば幸いです。
※掲載している価格などの情報は、2022年5月時点でのものとなります
世界のマルジェラがアレンジした、高級ジャーマントレーナー
この後で紹介するブランド「タナカユニバーサル」が復刻させた、ドイツ軍の訓練スニーカー・ジャーマントレーナーをリスペクトしたモデルで、タナカユニバーサルに発注した際『自由に作っていいですよ』と言ってもらったことに感銘を受けて「レプリカスニーカー」という名前をあえて名乗っています。
世の中に数多く流通するジャーマントレーナーの中でも「スウェード素材の面積」が多いという、デザイン的特徴があります。
ぱっと見だと見逃しがちなのですが「つま先」だけでなく、「靴ひもを通す羽根周り」と「側面のパーツ」にもスウェード素材が採用されているのが解っていただける筈です。
価格帯も相まって、いわゆる“高級ジャーマントレーナー”を購入したい人にとって高い満足感が得られる選択肢といえるでしょう。
デザインポイント
ブランド名
その他のポイント
マルジェラがリスペクトした日本ブランドによる、オリジナルに最も近い復刻モデル
忘れ去られていた生産ソース(機械、型紙、ナイフ etc.)を再利用する形で、ジャーマントレーナーを現代に復刻させた功績があり、現在のジャーマントレーナーが知られる土台を築き上げました。
マルジェラが自ブランドのジャーマントレーナーを「レプリカ」と呼ぶことでリスペクトしているのは、他でもないこのブランドです。
そのため、『ジャーマントレーナーって色々あるけど、オリジナルってどれ?』という問いに一番適切なアンサーは、『一番、オリジナルに近いのはタナカユニバーサル』ということになるのです。
この後で紹介する『リプロダクションオブファウンド製』と比較すると、オリジナル寄りなのが特徴。
よりヴィンテージ物や歴史物、ミリタリー物が好きな方は、こちらのタナカユニバーサル製がオススメです。
マルジェラからジャーマントレーナーを知った人へ。
ブランドや生産背景が、1つ上で紹介しました「タナカユニバーサル」と似ていますが、こちらのモデルは、シルエットが細身に仕上がっていたり、配色にベージュが多めだったりと、実はマルジェラ製寄り。
ジャーマントレーナーに対して「ミリタリーシューズ」よりも「お洒落なスニーカー」というイメージを持っている方は、こちらのリプロダクションオブファウンド製がオススメですよ。
▼紹介したジャーマントレーナーのレビュー
デザインポイント
ブランド名
その他のポイント
最初に1足にピッタリ。リーズナブルなジャーマントレーナーを探している方へ!
合成皮革を採用しているモデルなので、何より安いのが最大の特徴。
コストとの兼ね合いなのか、2万円以上のモデルと比べると、インナーやソールに若干の安っぽさを感じるものの、それは無理難題というもの。この価格帯で購入できることを一緒に喜びましょう。
▼紹介したジャーマントレーナーのレビュー
5.0
想像通りの質感でした(^^) レプリカだけど高見えするし、どんなパンツにも合うシューズ。良い買い物でした。引用元:楽天市場
オールホワイトに、グレースエードの上品なアクセント。
『もっと白ければなー!』という具合に、思っていた白スニーカーフリークの方は是非ぜひ。
バルカナイズ製法のソールで存在UPな日本製ジャーマントレーナー
割とオリジナルままなデザイン多いジャーマントレーナー界の中で、自ブランドらしさを採り入れているのが特徴。ちょっと違うジャーマントレーナーを探している方は是非チェックです。
サイドの穴装飾ら、グレー装飾に加えられたディープグレーラインなど、細かなこだわりが見て取れます。
トレーニングシューズ感がUPした、オールカーフレザーモデル
通常タイプがスウェード素材を採用している部分にも、シボ感があるカーフレザーを採用。本来のトレーニングシューズ味が増したデザインに風変りしています。
ブラックカラーのジャーマントレーナーを探している方へ
足の甲をつつむ部分(アッパー)のレザー素材を、ブラックで統一した配色が特徴。
つま先の素材は、変わらぬスウェード素材なのですが、オールブラックにしたことで「素材の違い」「素材感のコントラスト」は控えめになったとも言えます。
▼紹介したジャーマントレーナーのレビュー
5.0
普段27cmで、今回も27cmを購入しました。
甲高ですが、全く窮屈さは感じません。
甲高や幅広ではない方は、ワンサイズ小さくても問題なく履けるのではないでしょうか。引用元:楽天市場
よりレトロな雰囲気を楽しみたい方。もしくは、普通のジャーマントレーナーじゃ満足で着
全体のボリュームが少し増すこと以上に、レトロな雰囲気が特徴的です。
▼紹介したジャーマントレーナーのレビュー
5.0
品質、履きやすさ共に良くシリーズ3足目のリピートです。キレイめにもカジュアルスタイルにも万能なスニーカーでおすすめですね。引用元:楽天市場
ミリタリー感UP! ハイカットタイプのジャーマントレーナー
マルジェラのジャーマントレーナーを参考にしているのか、グレースウェードの面積が多いのが特徴。
ソールの色味が鮮やかなのもマルジェラ味がありますね。
靴からブーツに形が寄ったことで、よりミリタリー系のコーディネートや、オリーブやブラウンなどのアースカラーとの相性がUPしています。
女性の足元をメンズライクに引き締める、ヨウジヤマモトの解釈。
モノクロカラーやシャープなシルエットを採り入れた、レディースブランドでありながら格好イイ という言い方も今どき古いのかもしれませんが デザインには、“女性にメンズライクな服を着てほしいという強い想い”から生まれたワイズの存在意義を強く感じますね。
また、側面の「Y」ステッチに遊び心が込められていてイイですよね。
あとがき
以上、「ジャーマントレーナー」について、色々と語ってきました。参考になる部分はありましたでしょうか?
正直、この記事を書く前は「ジャーマントレーナー=マルジェラ(でしょ多分)」というおぼろげな認識があったので、私自身も本腰をいれて調べられたことで勉強になる部分が多かったです。
ブランド物や有名モデルに関しては、デザインや価格以外のバックグラウンドもなかなか味わい深いものが多いですよね。
皆さんも、理想のジャーマントレーナーを手にしつつ、今、世界にジャーマントレーナーが広まった歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
『明治生まれの靴博士』編集部、大山がお送りしました。
ではまた。
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