ライニング(腰裏)の縫い合わせ部分は、“箱縫い”という手法によってまとめられている。通常ライニングのまとめは、縫い目が履き口にまで抜けるように一重で縫われていることが多い。箱縫いは、一旦履き口付近まで縫製したあと、ミシンの角度を変え箱型を描いて再びソール方向へ縫い目を戻す。
これによって、ライニングの縫い合わせ部分が履き口側からほつれることがなくなっている。靴の着脱が多く履き口周辺に付加のかかりやすい日本人の特徴を考えてのことと言える。
そしてだし縫いがヒールの周りまでぐるっと掛けられているのがご覧頂けるだろうか。この360度グッドイヤーウェルトとダブルステッチによって、堅牢かつカジュアルな雰囲気が感じられるカウンター部分。単なるカジュアルではなく、“紳士靴メーカーが作るカジュアル”としての「らしさ」は、曲線の多い分難しくなるステッチワークにも表れている。 |