例えば、寒さで足元が冷え込む時、活動的に動き回る場面など、足首まで頑強に包み込むブーツは、快適で安定した歩行を履き手に約束してくれる。「編み上げブーツ」はその最たるものだ。

「足を守る」という設計思想のもとに仕立てられたこの靴は、履き口まで施されたシューレースがフィッティングの柔軟性をもたらし、またその頑強性など、実用性としての優秀さから実際軍靴にも採用されることが多い。機能性を重視するせいか、現代では「編み上げブーツ」と言えばカジュアル用途のイメージが強く、そういった色彩で仕立てられた靴をよく目にする。

しかしながら、この靴は決して無骨なものであってはならない。少なくとも、大塚製靴としては編み上げブーツが無骨なブーツだという考えは毛頭ない。

我々には伝えなくてはならないことがある。かつて西洋の文化が導入され、日本にフォーマルという概念が形成されつつある時代、紳士淑女の足元を飾る靴を仕立てる中触れた、 「エレガントな編み上げブーツ」、という存在を。


「ドレスブーツ」 ―。
西洋の物がもてはやされ、一部の上流階級の者達が足元をいかに美しく見せるか競い合っていた時代、当時の淑女の足元を飾る靴として我々は実際にこの靴を仕立ててきた。本来、この靴は美しさに主眼を置いて製作した靴だったのだ。

大塚製靴として靴を仕立てる以上、実用性だけではなく、細部に「履き手を引き立てる美しさ」を靴に込めることは我々の義務である。美しさを競い合った者達が着用したかつてのそれのように、「美しきブーツ」という原点に戻り、クラシカルで気品を醸し出すような一品を思い描き製作したのが、このブラックの編み上げブーツである。

礼を失することの許されない場面、いや、そうでなくても現代においてはコーディネートに洗練された美しさが求められる場面が多いが、そんな時、他にはない鋭利なオリジンを有したこの靴は、気品をもって足元を飾ってくれる。


























 



■Last(靴型):B-815
■Width(足幅):EE
■製法:グッドイヤーウェルト製法

■素材
 甲革:カーフレザー×スエード
 腰裏ライニング:牛革

■ハナ止め:シャコ止め(手縫い)
■口周り:フレンチ
■底仕上げ:半カラス
■コバ仕上げ:ヤハズコバ
■ウェルト面仕上げ:糸出し
■シャンク:布巻きスチールシャンク
■中物:天然ウールフェルト(刃入り)
■踵形状:ピッチドヒール


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